どうなる? 今年のお米

【理事のつぶやき りじつぶ】

理事の亀垣です。
こちらの地域も今年のお米の収穫時期が近づいてきました。早い人はもう稲刈りを初めているかもしれません。

ここで気になるのはこれからのお米の価格です。お米の価格を考える際、ポイントとなるのはJAが設定する概算金の金額ですが、この概算金とは何でしょうか?
JAは生産者から獲れたお米を預かって一年以上かけて徐々に売っていきます。本来なら全部売れた時点で初めて売上金額が確定し、それから生産者に代金の支払いとなります。しかし、それまでに必要な時間は1年半くらい。
これでは生産者からしたらたまったものではありません。秋に出荷したお米の代金が翌々年の春にしか入金されないのですから。JAからの入金がある無しに関係なく肥料代や農薬代、農機具代の支払いはやってきますし、従業員の給料や経営者自身の生活費も必要です。

そこでJAは秋のうちに「これぐらいの金額で売れるだろう」と見込みを立てて生産者に代金を仮払いします。これが概算金というものです。その後、お米が全部売れた1年半後ごろに清算金の支払い(見込みより安くしか売れなかった場合には概算金の一部返却)があって初めて一連の販売業務が完了します。

このJAの概算金はその地域のお米の仕入れ価格相場の1つの目安になります。お米を仕入れるのはJAだけではありません。民間企業もお米を買います。こういった企業は当然、概算金の金額を参考にしますし、どうしてもお米が欲しい時は買取金額をJAの概算金より高く提示してきます。

誰もが知っていることですがお米は秋にしか収穫できません。仕入れができる機会もその時だけです。だからみんな限られた期間に米を確保しようと必死になります。注文をくれたお客さんに対して「お米が仕入れられませんでした。ごめんなさい」では済みませんませんからね。
どれだけ仕入れられたかでその後の1年が決まります、激しい仕入れ競争です。

こんな事情もあって、お米を仕入れようとしている人はJAの概算金がいくらになるのかは非常に気になるところです。それどころが、収穫が進み「どうも今年は思ったより獲れてないらしい」なんてことが分かってくると、更に価格を上げてお米を集めようとします。
こうして収穫期間中にも生産者に提示する金額がどんどんと変わっていきます。
このような買い取り合戦がエスカレートしてお米の値段がどんどんと上がっていきます。


そしてこの秋ですが「想定していたよりお米が獲れていない」という声が収穫が終わった産地からチラホラ聞こえてきてます。猛暑や水不足が影響していると考えられます。
少なくとも、今年とれるお米については価格が下がる見込みはほとんどなく、むしろ値上がりすると考えて間違い無さそうです。

ちなみに今はお米が値上がりする局面ですが、お米が余ったなどして値下がりするときも同じように激しい勢いで値下がりすると思います。お米に限らず農産物は需給バランスが元となって相場(価格)が決まりますが、そのバランスは実にクリティカルで繊細なものです。少しの過不足が非常に大きく相場を動かします。その背景には欠品が許されない商慣行なども影響していると思います。みなさんも、品切れが多いスーパーからは自然と足が遠のくでしょ? 飲食店などはメニューが決まっていますから品切れについてはもっと厳しい。だから市場の品物が少なくなってくると、欠品を出さないようにとどんどんと高値で仕入れていくようになりよけい、相場高騰に拍車がかかります。


生産量の調整で需給バランスをとり、価格を安定させるというのは理屈上は可能ですが相場の反応が非常にクリティカルなことや、気象条件によってそもそも安定生産が難しいなどからその実行は現状は大変難しいのです。だからお米の価格を安定させようと思ったら、生産量の調整だけでなく他の手段もあわせてとる必要があるでしょう。