友に会いに行く日

河野です。

酷暑の東京に墓参りに行ってきた。43歳という若さで病に倒れた児童文学者広越たかし氏を悼む『メロディー忌』に参加するためだ。若かりし頃、共に切磋琢磨しながら創作活動をしていた仲間が年に一度集まる日だ。彼の「メロディー・ストーリーズ」(童心社)という珠玉の短編集にちなんで名付けられ、彼が所属していた同人が中心となって墓参りをし、彼の作品を読み、互いの近況報告をし合っている。

彼は品川区にあるお寺に眠っているが、その境内には樹齢約800年、幹回り7.2m、高さ40mの大イチョウがそびえ立っている。整った大木の姿は壮観で、明治時代まで沖合の漁師たちの航行の目標だったと言われている。幹や枝からは古木であることを示す乳根を垂らしていて、雄樹ではあるが母性を感じる慈愛と風格を備えた逞しくも美しいイチョウの木だ。

広越氏とは同い年だったが、彼は高校生の時に「兄ちゃん」で雑誌「日本児童文学」新人賞佳作受賞し作家デビューしていたし、アルプス子ども会の学生リーダーとして多くの歌を作詞作曲していたから、私にとっては雲の上の存在だった。

しかし、児童文学の勉強会で出会った彼は、ニコニコしながら柔らかな口調で語る人で、鋭い指摘をされても落ち込むといより、なるほどなぁと感心してしまう不思議な存在だった。

社会人になっても児童文学仲間としての付き合いはずっと続いていた。勉強会だけでなく、キャンプや芋煮会など、楽しいイベントも共にした。

長い年月が過ぎ、現役の児童文学作家として今も活躍している仲間たちだが、メロディー忌に集う私たちは、がむしゃらに夢を追っていた時代に戻っている。

くだらないおしゃべりが楽しく、そこには間違いなく彼がいて、いつものようにニコニコしながらみんなを見ている。

「ねぇ広越さん、これどう思う?」

「ますみちゃん、それはさぁ……」

「それは? なに? え?」

ああ、大イチョウ様~お願いです。年に一度でいいから彼をこの世に返してください!

あっ! 彼は43歳の姿のままで、私たちは国から高齢者ってお墨付きをもらっている年齢だ。ずるいなぁ。いやいや、広越さんだったら「みんなだけおじいちゃんおばあちゃんになってずるいなぁ」って言うかな。

「来年はさ、もう少し涼しい時期にメロディー忌開催しよう」

反対する人は誰もいない。広越さんだってその方が安心だって言ってくれるはず。

一足先にあちらの世界で、故人となった児童文学の先人たちと楽しい時間を過ごしているであろう広越さん。私たちもいずれそちらに行くけど、その時はみんな出会った頃の若いピチピチした姿で会いましょうね♡