品川区が今年10月から学校給食の食材を有機農産物に切り替える事を発表しました。
現実は有機農産物だけでは到底、量も供給安定性も確保できないでしょうから特別栽培農産物(農薬使用量や化学肥料使用量を50%以上削減して栽培した農産物)も使用すると思われます。
この時の品川区長の発言が一部の有機栽培農家に波紋を広げています。要約すると「有機栽培だと健康に良く美味しい」という趣旨の発言があったからです。
今、有機栽培生産者で「有機栽培農産物は健康に良い」と発信している人はすでに少数派です。生産者の間では有機栽培VS慣行栽培(農薬や化学肥料を使用した栽培)という構図は大方すでに昔のものとなり、お互いを認め尊重しあう雰囲気に変化してきました。今はどちらかというとこのような煽りをしているのは生産者ではなく、一部の消費者や閲覧数稼ぎのインフルエンサーが主体のように見受けられます。
生産者は長年のやりとりを経てこの対立構造が無益であるとか、美味しい野菜が作れるかどうかの本質は有機栽培か否かという部分ではないということを現場を通じてわかってきたことが背景にあるのかと思います。
そんなところへ区長という立場ある人のこの発言は、有機栽培生産者にも波紋を投げかけ一部では反発も出てきています。有機栽培であれば安全で美味しいものが作れるという地位ある人の発言は旧来のそのような漠然としたイメージに頼ることから脱却し、有機栽培の新しい価値や在り方を模索している多くの人の否定ともとれるからです。真面目に有機栽培の意味や将来を考えている人ほどそう感じるのかもしれません。
実は先端を行く有機栽培生産者と、一般の消費者の有機栽培に対するとらえ方の違いにはかなりの開きがあると前々から思っていましたが、今回は区長の発言の背景にはその意識の違いがあるなと、私はまず感じました。
一般的に有機栽培農産物はコストがかかり価格が高いといわれています。しかし最先端を行く有機栽培農産物の生産コストは、機械化や合理化、IT技術の活用によって慣行栽培の生産コストに肉薄するほど安くなってきている事例も出てきています。
さて、機械化や合理化で栽培された有機栽培農産物をこれから消費者は受け入れるのでしょうか?
もしかしたら、消費者が有機栽培に望んでいるのは有機栽培のマークではなく、牧歌的な雰囲気やつながりなのではないでしょうか?
理事:亀垣
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